2-018 古民家のリフォーム 2007.07.19(thu)
質 問 2007.07.11

 昨年リフォームをしました。殆どを自然素材でとこだわり、希望しました。
外壁は元々土壁の上に漆喰塗りでしたから漆喰部分を剥がし塗り直しを依頼しました。

工事明細には「左官工事」として「アスファルトルーフィング、ラス網張り、下塗り、漆喰仕上げ」となっていました。
仕上表には特に記載はありませんでした。

  ところが漆喰と共に竹桟のところまで土壁を落とし、その上に構造用合板で覆ってしまった事がわかりました。 その上から下塗りなどしたようです。

  漆喰壁のよさは吸収湿性にあると思いますが、合板などで(裏側全てと側面の殆ど)覆ってしまって本来の漆喰壁の特性を殺してしまって気密性ばかり高くなってしまったのではないかと気になっています。

  因みに我が家は在来工法の、田舎に多い田の字型で手入れすれば3,4百年は持つといわれていました。
先々代がせっかくこだわって建ててくれたものを合板を使用して通気性の悪いものにして耐久性にも問題が出てくるのではないかと気になってしかたありません。

ご多忙とは存じますがご意見をお聞かせください。
よろしくお願い致します。
答 え 2007.07.11


●○○様 こんばんは。
質問、拝見しました。

まず、リフォームの目的を発注された先にどのように伝えたかによって、 わたしからの意見も違ってくるような気がいたします。

 旧家屋の断熱性や気密性や耐震性を上げるというところに着目すれば、外部から容易に補強できる構造用合板を使う可能性もあると思います。

 ただし、壁体内の通気は必須と考えていますので、実際の施工はどうだったか確認が必要です。

 頂いたメールから推測するに、旧家屋は真壁(柱が内外から見える壁)だと思います。

 この構造ですと、通気層を作りにくい構造ですので、今では、外部は柱が見えない構造に作ることが多いように思います。

 外部に通気層をとることによって、壁体内の湿気を放出して、健全な状態に保って、建物の断熱性や寿命を長くするというのが一般的です。

 今回のリフォームの主眼点をお聞かせ願えれば、○○さまへの意見を送れると思 いますが、 メールの内容から、せっかくの竹コマイの下地や土壁をもっと大事にしてリフォームされたらと思いました。

 このへんは、着工前に施工業者と綿密な打合せがなかったのか?と悔やまれます。

なかなか、的を得ないお答えで、申し訳ありません。

では。
阿部利広/阿部建築研究室
 
質 問 2007.07.11

阿部様

早速のお返事有難うございます。
リフォームの注文としては総面積の約5分の2については確かに寒さ対策とし断熱性をアップしてくれと申しました。
しかし残りの約5分の3についてあくまでも既存の状態維持と依頼しました。業者の連絡ミスで断熱材が入れられてしまったのを見て取除かせたくらいです。しかもその業者を選んだのも社長自ら自然素材の使用を強調した為でした。

おっしゃる通り真壁です。
土壁を竹コマイのところまで半分落とし、その上に合板を張り黒いクロスのようなものを張り金網(のようなもの)を張りその上に漆喰を塗ったようです。


>ただし、壁体内の通気は必須と考えていますので、

>この構造ですと、通気層を作りにくい構造ですので、今では、外部は柱が見えな
>い構造に作ることが多いように思います。

>外部に通気層をとることによって、壁体内の湿気を放出して、健全な状態に
>保って、建物の断熱性や寿命を長くするというのが一般的です。

とありますが我が家のようなやり方ではやはり通気性が劣り、湿気もこもる、そして寿命も短くなってしまうということになりますか?

合板を例えば杉板に替えるなどすれば多少は(合板よりは)良い状態になるのでしょうか。大変恐縮ですが今一度ご意見を賜りたくお願い致します。

○○

答 え 2007.07.12

●○○さま おはようございます!
 現代のように、室内の環境を快適にするあまり、室外との温度差がかなりできてしまうと思います。

ふるいいい住宅でも、この現代の生活様式を受け入れざるを得ないと考えて、前のメールの内容になりました。

この温度差が結露の原因になり、そのことが建物の寿命に影響すると言われています。

真壁ですと、構造体が見えている分、安心だと思っていますが、壁体内の環境も考えないといけません。

今回の工事で、一番残念なことは、土壁の半分を落してしまったことです。
かなりふるい土壁は水を混ぜて練ると今でも使えました。
どのくらいの厚さか解りませんが、新たに塗った壁の厚さより相当厚かったように思います。

この厚さと重さが断熱性、防音性、吸湿性などなど、土壁の長所だと思います。

今回の工事内容を少し説明したいと思います。

@土壁を落す(残したかったですね)
A木で下地を作る(想像です)
B断熱材を充填
C構造用合板を打ちつける
Dアスファルトフェルト(防水紙)を張る(黒いクロスのようなもの)
E壁の付着をよくするための金網を張る
Fモルタルを塗る
Gシックイを塗る

という工程だと思います。

A〜Gはわたしもよくやります。構造用合板を杉板に変えてもそれほど変わりません。

一番大事なのは、B〜Cの間の空気の流れを作ってあげればいいのですが、天井と梁の空間に開放できていれば大丈夫です。

文書ではなかなか説明しにくいので、絵にしてみましたのでご覧下さい。
内壁が土壁などであれば、○○様がお考えの状況より、大丈夫だと思います。
内装に調質性ある材料を選んでください。

では。的を得ない説明ですが・・・不明なところはまた連絡してください。
電話でもいいですよ。。。

では。
阿部利広/阿部建築研究室
電話0233-52-2318
 
質 問 2007.07.12

阿部様

早朝からのご丁寧なお返事、心からお礼申し上げます。
考えるばかりで不安でしたがご説明を戴き少し安心しています。
有難うございます。


>この厚さと重さが断熱性、防音性、吸湿性などなど、土壁の長所だと思います。

>@土壁を落す(残したかったですね)
>A木で下地を作る(想像です)
>B断熱材を充填
>C構造用合板を打ちつける
>Dアスファルトフェルト(防水紙)を張る(黒いクロスのようなもの)
>E壁の付着をよくするための金網を張る
>Fモルタルを塗る
>Gシックイを塗る

この工程のうちAとBはありませんでした。断熱材は土壁よりも内側からだけです
(それも総面積の5分の2程度で残りは断熱は一切してありません)。
すなわち@の次にすぐCです。

図面まで書いていただいてよく理解できました。本当にありがとうございました。

大変恐縮ですが再度質問させて戴いてよろしいでしょうか。

a. @のあとすぐCの工程=合板張りとなっていますが、それでも残した土壁の厚みに
  よっては空気の流れ(通気性)もある程度期待できるということになりますか。合板
  の厚さを思うと心配ではありますが。

  >天井と梁の空間に開放できていれば大丈夫です。
  
  図面のようになっています。又、内壁は、断熱材を入れた部分はモイス(吸湿性が
  あると説明されています)、断熱材を入れない部分はモイスと漆喰です。

b. 構造用合板には通気性、吸湿性などは一切ないと考えてよいのでしょうか。

c. 昔ながらの土壁の上に漆喰を塗るという方法以外ではどうしても構造用合板は
  使用しなければ仕上げる事はできないのでしょうか。
  合板以外のものがあるとしたらそれはどのようなものでしょうか。
  (今後「離れ」などの補修の参考にさせて戴きたいと存じます。)

d. 現段階で思うことは残した土壁はかなり少ない、と考えます。
  通気性のアップを考えた時、今から何か手を加えて出来ることはあるでしょうか。

ご多忙とは存じますが、急ぎませんのでお教えいただけたら有難く存じます。

○○

答 え 2007.07.12

●○○さま こんにちは。

> 阿部様
>
> 早朝からのご丁寧なお返事、心からお礼申し上げます。
> 考えるばかりで不安でしたがご説明を戴き少し安心しています。
> 有難うございます。
>
>
> >この厚さと重さが断熱性、防音性、吸湿性などなど、土壁の長所だと思います。
>
> >@土壁を落す(残したかったですね)
> >A木で下地を作る(想像です)
> >B断熱材を充填
> >C構造用合板を打ちつける
> >Dアスファルトフェルト(防水紙)を張る(黒いクロスのようなもの)
> >E壁の付着をよくするための金網を張る
> >Fモルタルを塗る
> >Gシックイを塗る
>
> この工程のうちAとBはありませんでした。断熱材は土壁よりも内側からだけです
> (それも総面積の5分の2程度で残りは断熱は一切してありません)。
> すなわち@の次にすぐCです。
>
> 図面まで書いていただいてよく理解できました。本当にありがとうございました。
>
> 大変恐縮ですが再度質問させて戴いてよろしいでしょうか。
>
> a. @のあとすぐCの工程=合板張りとなっていますが、それでも残した土壁の厚みに
>   よっては空気の流れ(通気性)もある程度期待できるということになりますか。合板
>   の厚さを思うと心配ではありますが。
吸湿性は残った土壁で大丈夫と思いますが、通気性はあまり期待できないと思います。

木の下地なしで合板を打ち付けたそうですが、なにに止めたのでしょうか?
壁下地の竹コマイに止めたのでしょうか?
でこぼこになりませんでしたか?
このへんは見てないのでなんともいえなところですね。

>
>   >天井と梁の空間に開放できていれば大丈夫です。
>   
>   図面のようになっています。又、内壁は、断熱材を入れた部分はモイス(吸湿性が
>   あると説明されています)、断熱材を入れない部分はモイスと漆喰です。
モイスという素材を知りませんでした。
で。。。ネットで見たら 調質性の高い内装材とありました。
http://www.moiss.jp/index.php
なるほど!ですね。○○さんのニーズにピッタリ!

>
> b. 構造用合板には通気性、吸湿性などは一切ないと考えてよいのでしょうか。
一切といわれると・・・疑問が残りますが、通気性は期待できません。
吸湿性は現場に放置すると狂ったりしますから、水分を吸収しそうですね。

> c. 昔ながらの土壁の上に漆喰を塗るという方法以外ではどうしても構造用合板は
>   使用しなければ仕上げる事はできないのでしょうか。
>   合板以外のものがあるとしたらそれはどのようなものでしょうか。
>   (今後「離れ」などの補修の参考にさせて戴きたいと存じます。)
土壁の上に木下地をして杉板を張ってはどうでしょうか?
蔵など、シックイ壁の保護として板で作ったパネルを引掛けているところがあり、昔からある工法です。

壁下地となると、合板よりはラスカット(ダイケン)などのほうがいいかもしれません。

いままでの経過をみると、大判なものを下地にしないと、壁のでこぼこの処理がたいへんそうですので、木摺り下地は不向きなのかもしれません。
自然素材ということを考えれば、この下地がいいと思います。

> d. 現段階で思うことは残した土壁はかなり少ない、と考えます。
>   通気性のアップを考えた時、今から何か手を加えて出来ることはあるでしょうか。
断熱材を入れられたということから推測すると、送った図面のように壁体内の通気が計られるような気がします。
さらに内装に吸湿性のある材料をお使いですから、大丈夫だと思います。

これから生活される上で、暖房器具や家具配置などにも気をつけたいものです。
排気筒つきの暖房や北側の壁から少し離して家具を置くとか。

>
> ご多忙とは存じますが、急ぎませんのでお教えいただけたら有難く存じます。
>
> ○○

思うままに書きました。アイデアを思いついたら、またメールします。
>
> p.s. 古民家への理解がない業者などによって、私のように土壁を落として後悔する方
>   が減ることを期待して、貴重なお答えとともに相談内容は公開して戴いて構いま
>    せん。
ありがとうございます。

●わたしの設計した【民家再生の家】もご覧下さい。
内外ともに漆喰塗り、内装の床,天井は杉板、暖房は薪ストーブと蓄熱式床下暖房で、断熱材は麻ウールを使用しました。

では。
阿部利広/阿部建築研究室

返 信 2007.07.12

阿部様

沢山のアドバイス本当に有難うございました。
おかげさまでやや安心できました。
また、質問させていただく事がありましたらその時も
よろしくお願い致します。
ほんとうに助かりました。

○○
 
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